金型の製作は製品の生産において重要な役割を果たすプロセスです。また、多くの産業で広く利用されています。
この射出成形金型によって産み出される製品の良し悪しは、設計によってもたらされると言っても過言ではありません。
これから、長年蓄積した膨大にある金型設計要件を少しずつ、ご紹介していこうと思います。
収縮率の確認
収縮率は、射出成形金型設計において重要な要素です。これは、成形後の製品が冷却によって収縮する割合を表します。例えば、材料が1%収縮する場合、金型設計時にその収縮を考慮する必要があります。収縮率は材料の種類や形状によって異なります。設計時に正確な収縮率を把握し、寸法を補正することで、製品の寸法精度を確保できます。
客先と合議した収縮率を図面に必ず記載し、また金型データがその収縮率になっているか確実に確認する事。
例えば、間違った収縮率で金型を製作してしまうと、寸法NGで金型修理となり余計なコストを掛ける事になります。
使用鋼材の確認
さまざまな種類の鋼材があり、それぞれ特性や用途が異なります。炭素比率の少ない加工のし易い鋼材もあれば、炭素比率の高い加工のし難い鋼材もあります。炭素比率だけでなくステンレス系の鋼材や、焼き入れして使用するものもあり、優先される目的によって使い分けされます。
実際は客先から鋼材指定のあるケースが多いですが、以下の条件に見合った鋼材の選定になっているか確認する事。
- 生涯生産台数
- 金型保証ショット
- 金型使用期間
- 成形材料による摩耗や腐食
- エッチングシボの有無
- 鏡面レベル
- 靭性要求部品
- 摺動部品
- モールドベースの強度
間違った鋼材選定をしてしまうと、量産中に金型の摩耗が進む、成形品の外観が要望通りになっていないなど、取り返しのつかない結果を招くことになりかねません。
材料刻印の有無や位置の確認
材料刻印は、製品の樹脂情報を提供するための手段です。刻印は成形品に表示され、樹脂材料の種類や特性を識別するのに役立ちます。例えば、刻印には材料の商標、充填剤や強化材の名称が含まれます。これにより、材料の特性や品質を正確に把握できます。
材料刻印を金型に設定するためには、刻印文字、フォントの種類、大きさ、文字深さ、成形品に対し凹凸、範囲などの取り決めが必要。
JIS規格例
- 単一構成素材
例) >ABS<
- ポリマーブレンド又はアロイ ポリマーブレンド又はアロイ素材
例) >PC+ABS<
(最初に主成分を,続いて他成分を質量分率の大きい順に + 記号で区切る)
- 充てん材又は強化材
例) >PP-MD30<
(単一の充てん材又は強化材を含む組成物は,ポリマーの略語の後にハイフンを付ける)
- 鉱物粉末15 質量%及びガラス繊維(GF)25 質量%の混合物を含むポリアミド 66 の場合
例) >PA66-(GF25+MD15)< 又は >PA66-(GF+MD)40<
例) 25g以上の樹脂成形品には材料刻印が必要
金型が出来上がってから刻印を追加する場合は、余計なコストが掛かる場合があるので、先に客先と合意しておく必要がある。
デートマークの有無や位置の確認
デートマークは、金型や成形品上に刻まれる日付や番号で、製造日や製品のトレーサビリティを確保するために使用されます。デートマークを適切に配置し、正確な情報を記録することで、製品の品質管理を効果的に行うことができます。
デートマークは幾つかの種類があり、量産開始時期や使用年数、年、月、大きさ、文字深さなどの取り決めが事前に必要となります。
タイプ
- PL面交換タイプ
- プレート側交換タイプ
- 凸文字タイプ
- アジャスタブルタイプ
金型が出来上がってから追加するのは困難な場合があるので、打ち合わせの段階で取り決めを行っておこう。
ショットカウンターの設置有無の確認
ショットカウンターは、金型が何回使用されたか(金型が閉じる毎にカウントされる)を正確に計測するためのカウンティングデバイスです。射出成形では、金型の寿命が定められており、適切なタイミングでメンテナンスや修理を行う必要があります。ショットカウンターは金型の寿命管理に役立ち、成形品の歩留まりや金型の予防保全の計画を立てる際に重要なデータとなります。
金型ショット数の管理や金型寿命の確認に必要なので、客先と打ち合わせ時に確認をしておく。
糸引き防止スプールの設置が必要か客先に確認
成形時にスプールから固化した材料が離型する時に糸引きが発生することがあります。糸引き防止スプールは、この問題を軽減するために設計され、スプールからの糸引きを抑えます。
糸引きしやすい成形材料やハイサイクル条件の場合は、客先との打ち合わせ時に提案しておく。
糸引きが発生したまま成形すると、金型PL面に樹脂を挟み込みダメージを与える。