射出成形金型設計(その4)

今回は、成形品の離型(エジェクター)に関連した設計要件を紹介していきたいと思います。

ここは、それぞれの金型メーカーによって仕様があったり、個性が出るポイントになりますが、私のこれまでの実績からご紹介していこうと思います。

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エジェクターピンの逃がし径は+1mmとする事

エジェクターピンは、射出成形金型において成形品を金型から押し出すために使用されるピンの一種です。具体例として、エジェクターピンは金型部品のエジェクタープレートに取り付けられ、射出成形後、ピンが前進して成形品を金型から押し出します。これにより、成形品を取り外しやすくし、次の成形サイクルにスムーズに移行する準備を行います。エジェクターピンの適切な設計と配置は、成形品の抜き取りや金型の正確な動作に影響を与えます。

エジェクターピンの逃がし径は、これまでの経験から基本的に+1mmで設定します。

逃がし径は大き過ぎると、金型の組立に悪影響が出たり、逆に小さかったりすると、加工精度によっては余計な干渉を引き起こしたりします。

傾斜部のEP配置で滑り止めが設定されている事

成形品の押し出し部に傾斜がある場合は、エジェクターピンの一部に滑り止めの加工を施すのが一般的です。加工パターンは金型メーカーによって様々ありますが、刻印と同様に成形品に反映されるものなので、客先との合意が必要となります。

このような条件で、滑り止めのないエジェクターピンを使用すると、押し出し時にエジェクターピンが内倒れして成形品にキズをつける、或いは成形品がズレて自動取り出しが困難といった事になります。

エジェクタガイドはバランスよく配置されている事

エジェクターガイドは、射出成形金型においてエジェクターピンの正確な作動をサポートし、ガイドする役割を果たす部品です。エジェクターガイドは通常、エジェクタープレートの一部として配置され、エジェクターピンが直線的な運動をするための誘導を行います。これにより、エジェクターピンの作動がスムーズで正確に行われ、成形品の抜き取りや金型の耐久性の向上に寄与します。

エジェクターガイドの数は4本を基本として考えます。2本はバランスが悪いのでNGです。

設置位置は、製品のレイアウトや空いたスペースを考慮し、バランスよく配置する事。また、加工精度が悪いと動作不良を引き起こすので、その点注意が必要です。

エジェクタガイドブッシュはエジェクタプレート受けで逃がす事

エジェクターガイドブッシュは、射出成形金型においてエジェクターガイドピンの作動をスムーズかつ正確にガイドするための部品です。

エジェクタープレート受け(俗に2番プレートとかプレート下とか言う)に0.2mmから0.3mmのクリアランスを設けると、金型の分解組み立てが用意になります。

ここのクリアランスが無ければ分解組み立てで苦労することになります。

エジェクターガイドピンは C リングタイプにする事

エジェクターガイドピンの役割については、前の項でも前の前の項でもやりましたので説明はいらないかと思います。

エジェクターガイドピンは数種類の仕様があるのですが、Cリングタイプが扱いやすく金型の分解組立も容易です。

他のタイプだと、必要以上に金型加工精度を求められるので、作動時のトラブルのリスクが高まります。

製品レイアウトに偏心がある金型は、エジェクターロッドの数を考慮する事

エジェクターロッドの位置については、「射出金型設計(その2)」でご紹介したように、優先するのは量産する成形機の仕様です。それを踏まえた上で考慮、客先に提案などするとよいでしょう。

エジェクターの押し出しバランスが悪いまま成形を続けると、エジェクターピンやガイドに負荷が掛り、エジェクタープレートの戻りが悪くなるなど、成形中の部品破損に繋がる恐れがあります。

エジェクタストローク制限はエジェクタロッド上付近に設置している事

エジェクター制限ブロックは、射出成形金型においてエジェクタープレートの動きを制限する役割を果たす部品です。具体例として、エジェクター制限ブロックはエジェクタープレート上に設置され、エジェクタープレートの上下運動を制限します。これにより、エジェクタープレートが過度に上昇することを防ぎ、成形品の破損や金型の故障を防止します。

エジェクター制限ブロックを設置する場合は、なるべくエジェクターロッドの近くにバランスを考慮して設置する事。

サポートピラーに取り付けるカラータイプの制限ブロックもあるので、ケースに応じて選択するとよいです。

制限ブロックが遠いところに設置すると、成形機の入力ミスなどが原因でエジェクタープレートが変形して作動しなくなるケースもあります。

ストローク制限を金型に表示する事

先述したトラブルもあるように、エジェクタープレートのストローク制限は、金型の操作側に刻印、或いはシートを貼るなどで、成形担当者にわかるように設置すると

ストローク制限を明示していても、ポカミスは起き得るものなので、保険を掛ける意味でもエジェクターロッド付近に制限ブロックの設置をお勧めします。

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