今回は、入子に関連した設計要件を紹介していきたいと思います。
入子の仕様は、客先の要望というより、金型メーカーの経験値やノウハウ、拘りの詰まった設計思想であることが多いです。要求されている品質はどうなのか?成形した際の金型の動きを予測しながら、十分な検討が必要です。
キャビ、コア入子に位置決め機能を設定ける事
入子は射出成形金型における重要な部品で、成形品の形状を決定します。例えば、入子は成形品の内部空洞や凹凸を形成するために使用されます。冒頭でも述べましたが、入子の設計条件は、製品の要求品質やその他、製品の要件に合わせて検討する必要があります。
位置決め機構を導入する際に重要なポイントがあります。キャビ側の製品の抜き勾配より小さい角度の設計値とする事。例えば、製品の抜き勾配が2°であれば、位置決め機構の立壁の勾配は1°とします。
こうすることで、成形圧の掛かった金型が開く際にも、成形品にカジリやキャビに取られるなど起こさずに離型ができるわけです。
マストな設計ではありませんが、あくまでも製品の要求品質に基づいた判断が必要です。例えば、外観製品(鏡面・シボ等)である、抜き勾配が小さい、成形圧が偏る製品形状などは必要と言っていい機構となります。
入子がモールドベースのPLより凸の場合、ニガシを設定る事
設計上、PL(パーティングライン)が平行の製品は多くありません。その多くは変形パートと呼ばれるPL構造となっています。ですので、入子の設計構造は、キャビ・コアのモールドベースのPL面のどちらかに凸となります。よって、入子の凸となる部分に通常、0.5mm~1mm程度の逃がしを設定し、相手モールドベースとの干渉を避けます。
逃がしがないと当然ながら入子とモールドベースが干渉し、金型が閉じない、成形中に金属粉が製品に付着するなどの問題が起きます。
キャビ番号は基準側から整列されている事
同じ製品を2個以上成形する場合に必要な設計要件になります。
基本的に、金型の基準からナンバーリング(コア側に刻印)します。こうすることで、同じ形状の製品で4個取りだったとしても、成形品に反映された番号を確認することで、金型のどの部品に問題があるか?が一目瞭然になります。
ナンバーリングされていないと、4つのうち1つの成形品に問題があったとしても、金型のどの部品を確認すればよいかの判断がつきません。
入子の誤組防止として入子は面取り、モールドベースはR形状とする事
入子の基準側だけに面取りとします。面取りのサイズは入子の深さによって考慮する必要がありますが、概ねC6mmからC9mm程度がよいのではと思います。その際、モールドベースの加工寸法は、R5からR8とします。
絶対に誤組をしないという方には不要な内容ではありますが、ポカ除けとして覚えておいて損はありません。